寺内研究室について
寺内研究室(都市交通計画研究室)は、都市と交通の計画学を基礎として、身近な地域にあるさまざまな課題を研究する研究室です。
生活道路や通学路の交通安全、商店街の歩行環境、バリアフリー、防災・防犯、子育てと居住環境など、研究対象は一つの分野に限られません。共通しているのは、実際の地域をフィールドとして、人の動きや暮らしから課題を見つけ、その改善につながる方法を考えることです。
フィールドでの実践的なプロジェクトを重視したスタイルの研究室です。
人の動き・人のくらしから考える
まちには、道路、建物、公園、住宅、商店など、さまざまな空間があります。しかし、その空間のなかで、移動する人、住んでいる人によって、その見え方や使われ方は異なります。研究室では、こうした「人の動き」や「人のようす」を手がかりとして、地域の課題を捉えます。統計データを調べるだけでなく、実際に地域を歩き、人の行動を観察し、地域の人の話を聞くことで、その場所で何が起きているのかを理解していきます。都市全体を俯瞰する視点と、一つの道路、一つの地区、一人ひとりの暮らしを見る視点の両方を大切にしています。
地域をフィールドにする
また、研究室では、地域住民、自治体、学校、商店会、町会・自治会など、地域に関わるさまざまな人たちと接しながら研究を進めます。研究者だけで答えをつくるのではなく、地域にある知識や経験を学び、ともに考えることを重視しています。
研究室では、二つの姿勢を大切にしています。
一つは、客観的に調べることです。交通実態調査、アンケート、ヒアリング、GIS、統計分析、人流データ、画像分析などを用いて、地域で起きていることをできるだけ客観的に把握します。
もう一つは、地域の人とともに考えることです。まちあるき、ワークショップ、大判地図やガリバーマップ、意見交換、社会実験などを通じて、地域の課題や改善方法を共有します。
データだけでも、対話だけでもなく、調査・分析 × 参画・協働の両方を行き来することが、研究室の研究スタイルです。
研究を、社会の課題につなげる
研究室では、現実の社会にある課題を研究テーマとして扱うことを大切にしています。
研究には、新しい知見を生み出す新規性が必要です。同時に、その成果が地域や社会の課題を理解し、改善を考えるために役立つ有用性も大切だと考えています。そのため、研究成果は論文や学会発表として社会に発信するとともに、地域での活動や提案にもつなげていきます。
地域での実践から研究課題を見つけ、研究によって得られた知見を再び地域に返していく。その循環をつくることを目指しています。
研究室の成り立ち
研究室のプロジェクトを重視するスタイルは、都市・交通計画に関する研究だけから生まれたものではありません。その背景には、建築と土木の双方を学んだ教育歴、都市・地域・交通計画の研究、そして福井や世田谷などで取り組んできた住民参加型の地域活動があります。研究室の成り立ちから経緯をたどります。
01|はじまりの前
豊田工業高等専門学校を卒業後、福井大学工学部環境設計工学科に編入学しました。環境設計工学科は、建築と土木の双方を学ぶことのできる学科でした。建築物や街路などの身近な空間から、都市・地域全体までを横断して捉える考え方を学びました。その後、地域・交通計画研究室に所属し、さらに福井大学大学院へ進学します。「人の動き」「都市を俯瞰する視点」「参加型まちづくりの技法」に関心を持つようになったことが、現在の研究室につながる源流として整理されています。
福井大学では、本多義明、川上洋司の指導のもと、交通計画、都市計画、地域計画に関する研究に取り組みました。同時に、福井地域を対象とするさまざまな調査や実践的なプロジェクトにも関わり、研究室の中だけで研究を完結させるのではなく、実際の地域をフィールドとして課題を捉える経験を重ねました。さらに、地域住民、地縁組織、自治体、専門家などが関わる住民参加型の活動を通じて、地域の課題を共有し、対話しながら改善策を考える方法を学びました。この時期に経験した、専門的な調査・分析と、地域に入って人とともに考える実践が、現在の研究室の基本的な研究スタイルにつながっています。
大学院修了後は、財団法人地域環境研究所の特別研究員として、都市・地域に関する調査研究に携わりました。
02|研究室のはじまり
2001年、国士舘大学に着任し、都市・地域・交通計画を中心とする研究室を開設しました。国士舘大学での研究・教育活動が始まると、研究のフィールドも福井から東京・世田谷へと広がりました。福井で培った地域との協働の経験を背景として、世田谷をはじめとする地域で、住民、町会・自治会、商店会、学校、自治体、専門家などと連携しながら、地域課題に取り組む調査研究や実践的なプロジェクトを進めてきました。
研究室の研究対象は、都市・地域交通計画を基礎としながら、次第に身近な生活圏のさまざまな課題へと広がってきました。生活道路の交通安全、横断歩道や通学路、商店街の歩行環境や荷捌き、交通バリアフリー、密集市街地の防災、子育てと居住環境などです。研究室紹介資料でも、生活道路、子どもの安全、荷捌き、バリアフリー、防犯、防災、新しいモビリティなど、「人の動きから見える地域課題」を幅広く扱う現在の研究領域が整理されています。研究方法も、交通量や速度などの交通実態調査から、アンケート、ヒアリング、GIS、統計分析、人流・プローブデータ、画像分析、まちあるき、ワークショップ、社会実験などへと広がってきました。扱うテーマや方法は変化しても、実際の地域を見て、調べ、課題を明らかにし、改善につながる方法を考えるという姿勢は変わりません。
03|東京・世田谷にあるひとつの研究室として
研究室(寺内)の専門分野は、おそらく交通計画や交通工学を基礎とする計画学です。より細かく言えば、生活道路の交通安全が主たる専門分野です。
とはいえ、この生活道路を研究することは、住宅地や商店街などの人の動きを知ることが必要となります。さらに、そうした人々のくらしを理解し、話を聞いて、共に考えることが重要です。理論で最適な解がいつも導き出されるのではなく、複雑にさまざまな要素が絡み将来予測は不確実です。だからこそ、これは間違いないだろうと考えられる先駆者の研究成果・知見を学んでおくことで、現場の役に立つことができると考えます。また、こうした実践の中から、同じ課題を持つ地区に役立つ知見を提供できるよう、研究としても進めていくことが重要だと考えています。
福井大学において、師とした本多先生は「自前の地域づくり」を掲げ、町医者を標榜されていました。福井のことなら、なんでもやるという姿勢をそこから学びました。東京は、日本の中心であると同時に、ひとつの地域と捉えて、幅広く取り組みます。建築か、まちづくりか、という枠組みをこえて、より幅広く総合的に考えるだけのことです。
地域にある具体的な課題を出発点として、その課題を理解し、解決方法を考えるために必要な知識や方法を組み合わせます。地域での活動から新しい研究課題が生まれ、その課題を調査・分析することで新しい知見が得られ、その成果が再び地域での実践へつながっていく。
世田谷にある一研究室として、実践と研究を往復すること。
それが、これまでの経緯の中で形成されてきた本研究室の方針です。