子どもと地域がつくる横断歩道安全プログラム

横断歩道で「止まってもらう」ために
子ども・学校・地域・警察がともにつくる交通安全
横断歩道は、歩行者が安全に道路を横断するための重要な場所です。
しかし、歩行者が渡ろうとしているにもかかわらず、自動車が停止しない場面も多く、特に子どもたちにとっては、道路上で自分の存在や横断する意思をどのように伝えるかが重要な課題となっています。
「どうすれば、ドライバーに渡りたい気持ちを伝えることができるのか」
この問いから始まったのが、二子玉川地区における「かるがもプロジェクト」です。
研究室では、横断歩道における歩行者とドライバーのコミュニケーションに着目し、交通実態調査、子どもたちとのワークショップ、交通安全教育プログラムの開発を、地域・学校・警察と連携しながら進めてきました。
本プロジェクトは、子どもたちが交通安全を「教えられる側」から「地域へ伝える側」へ成長していく、地域協働型の交通安全活動へ発展しています。
2018
横断歩道で車が止まらない問題への挑戦


課題発見から、子どもと考える解決策づくりへ
2018年、二子玉川地区では、横断歩道において歩行者が待っていても車両が停止しないことが課題となっていました。
そこで、研究室では、歩行者からドライバーへ横断意思を伝える方法について調査を行いました。
横断歩道における車両停止状況を調べ、手を挙げる、アイコンタクトを行うなど、歩行者による意思表示がドライバーの停止行動に与える影響を検証しました。
その結果を踏まえ、二子玉川地区交通環境浄化推進協議会交通部会、二子玉川小学校、玉川警察署と連携し、子どもたち自身が「どのような行動ならドライバーに伝わるのか」を考えるワークショップを実施しました。
子どもたちからは、手の挙げ方、体の向き、視線の向け方など、多くのアイデアが出され、その後の「横断安全ポーズ」につながりました。
KEYWORDS
横断歩道調査
歩車間コミュニケーション
子どもワークショップ
地域協働
2019
子どもたちが考えた「横断安全ポーズ」


子どもの提案を交通安全教育へ
2018年のワークショップで生まれた子どもたちのアイデアをもとに、交通環境浄化推進協議会交通部会で議論を重ね、横断歩道を渡る際の安全行動として「横断安全ポーズ」を決定しました。
このポーズは、単に「手を挙げる」という交通ルールではなく、
- ドライバーに自分の存在を知らせる
- 渡りたい意思を伝える
- 止まってくれたことへの感謝を伝える
という、歩行者とドライバーのコミュニケーションとして考えられました。
また、二子玉川小学校では、2年生が5年生から交通安全を学ぶ形式の教育プログラムを実施しました。
上級生が学んだ内容を下級生へ伝えることで、子ども自身が交通安全の担い手となる取り組みへ発展しました。
KEYWORDS
横断安全ポーズ
児童主体の学習
交通安全教育
2020〜2021
コロナ禍から生まれた新しい交通安全教育


子どもが「教える側」になる学習へ
2020年、新型コロナウイルス感染症の影響により、従来型の対面による交通安全教室の実施が困難となりました。そこで、保護者へ向けたビデオメッセージや交通安全クイズなど、新しい形式で交通安全を伝える取り組みを行いました。
コロナ禍の2年目となった2021年は、交通安全教室を経験していない低学年の子どもたちの安全が課題となりました。そこに、学校の先生からのご提案で、タブレットを全面的に活用し、5年生が交通安全教材を制作するプログラムへ発展しました。5年生の全児童に、玉川警察署・研究室による横断歩道の授業を実施しました。(その時の教材は、2020年度に作成したビデオメッセージの内容を小学生向けにリメイクしています。)それをみた子どもたちは、低学年の子たちにわかるように、横断歩道の交通安全についての動画を作成してくれました。
動画制作では、子どもたち自身が、「何を伝えるべきか」「どうすれば分かりやすく伝わるか」を考えました。
交通安全教育と情報教育を組み合わせた、子ども主体の新しい学習活動となりました。
LINK
KEYWORDS
ICT教育
動画教材
子どもが伝える交通安全
2022
「横断歩道のうた」による地域への発信

交通安全を地域文化へ
2022年には、横断歩道の安全な渡り方をより多くの人へ伝えるため、「横断歩道のうた」を制作しました。
歌には、子どもたちが安全に横断するためのポイントだけでなく、ドライバーへのメッセージも込めました。
歌唱には二子玉川小学校の児童が参加し、最後の部分では地域の大人がドライバーへ呼びかける構成としました。
交通安全を学校だけで学ぶものではなく、子ども、保護者、地域の大人、ドライバーが共有するメッセージへ発展させる取り組みです。
LINK
KEYWORDS
横断歩道のうた
地域への発信
交通安全文化
2023〜2024
継続する地域交通安全活動へ


学校・地域・警察による継続的な取り組み
2018年から始まった活動は、一時的なイベントではなく、地域に継続する交通安全活動として発展しました。
交通環境浄化推進協議会、二子玉川小学校、玉川警察署が連携し、子どもたちへの交通安全教育として毎年実施されています。
研究室が関わった調査やワークショップから始まった取り組みが、地域の中で受け継がれています。
2025〜
学校主体の活動として定着へ
【写真】
使用候補:
- 先生による指導.JPG
- 警察官_かるがも教室.png
地域で育てる交通安全へ
2025年からは、小学校の交通安全行事の一部として位置づけられ、学校が主体となって実施する活動へ発展しました。
交通環境浄化推進協議会や玉川警察署は協力する立場となり、学校・地域・警察が連携して子どもたちの安全を支える仕組みとなっています。
研究室が支援する活動から、地域自身が継続する活動へ。
かるがもプロジェクトは、研究成果が地域社会の中で育ち、根付いていく一つの事例となっています。
研究としての成果
調査研究から、地域で育つ交通安全へ

かるがもプロジェクトは、横断歩道における具体的な課題を出発点として、
- 交通実態調査による課題把握
- 行動変容につながる方法の検討
- 子ども主体の交通安全教育
- 地域との協働による継続活動
へ発展した実践型研究です。
道路の安全は、施設整備だけで実現するものではありません。
道路を利用する人々が互いに理解し、地域全体で安全な行動を育てていくことが重要です。
研究室では、現場の課題を調査・分析し、人と地域の力によって解決へつなげる研究活動に取り組んでいます