本学建築学系非常勤講師、木島千嘉先生の設計した「重ねの家」が新建築・住宅特集2012年11月号に紹介されました。
千葉県にある「重ねの家」は音楽家夫妻のための住宅。祖父母の代からの土地に3棟ほど建ち並んでいた木造家屋を、夫婦それぞれの練習スタジオと寝室、共用で使用する日常生活用スペースとして、新たにつくり換えたプロジェクトです。
既存家屋1棟を残し、1組のスタジオと寝室へと改修し、あとの要素を新築しました。
ポイントになったのは、演奏を練習するスタジオと寝室の音の制御をしながら、視覚的、心理的な要素を取り入れた空間づくりです。
視覚的な要素が、夫婦2人の距離感、近隣との距離感の取り方に大きな影響を与えます。
共に過ごす時間を豊かにしながら、2人の音楽家が互いのスペースやテリトリーを尊重し合えるために、空間の広さだけでなく、心理的な距離を調整する仕掛けが考えられました。
寝室を芯に収納や日常生活の場を円環状に重ねる平面構成と、エントランスからユーティリティを異なる素材の壁や造作で多角にずらしながら、重ねた隙間に個々のテリトリーの境界を混在、重複させる試みがされています。防音扉を開け放つことで、家の中に回遊性が発生し、遮音とは別の空間構成が実現されました。